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さて、今回のケースは、ある組織に人員を変えずに新たな機能を付加しようとする事例です。 よくあるパターンは、結局A君が一人で抱え込んでしまい、パンクして終わるものです。が、A君は自分が潰されずに、うまく事を運ぶことができました。どのようにしたのでしょう。 |
■起 その組織の間接部門の女性の「躾がなっていない」という噂をA君は聞いていました。 確かに、驚きました。朝「おはようございます」もなく、帰りも黙って帰る。机の引き出しはあけっぱなしで、ゴミ箱は溢れている。窓口というのに室の内も外も雑然としている。 極めつけは、言葉遣い。M課長とのやり取りは、それは刺々しいものでした…。 一方で、指示を受けた仕事は女性4人分担してアッという間に片付けてしまい、その素早さも驚嘆ものでした。このアンバランスはいったい何なのか。 M課長とのやり取りの観察から、A君は理解しました。 「あぁ、彼女達は躾されていないどころか、実によく躾けられている」 ■承 彼女たちは、その職場で何が評価され何が評価されないか良く見極めていました。 言われたことをすぐやることが求められているのであり、整理整頓などしても何ら評価されないことを知っています。むしろ、そういうことをやっていれば、「言われたことはやったのか」 と問われるだけです。 そう、求められていないことをやった場合、評価されないどころかクレームさえくるのです。 「考えるな、言われたとおりに速やかにやれ」 それがM課長のメッセージであり、彼女たちは、この職場の在り方に特化したプロなのでした。 ■転 このままでは、A君に全ての仕事が回ってきます。 A君は、彼女たちの戦力化に乗り出しました。 最初は一体何をさせられるのか、と敵対感情の中で始まった勉強会も、3ヶ月を過ぎる頃から変化の兆し。この兆しを捕まえて、A君は自分がやってきた人事諸規則のケーススタディに加えて、経理に応援を頼み、経理事務の勉強会を開始。 ところが、M課長からクレーム。 用事を頼みたい時に「勉強会」などで不在だと困る。そこまでする必要はないから、やめてくれ。 命令です。一時中断となりました。 女性達からは、今や「次はいつやるんですか」と督促。 さて、どうしたものか… ■結 そこで、ゲリラ戦法をとることに。M課長が出張等で不在となる時に実施。 彼女たちは、集中力を見せてみるみる実力をつけていきました。 半年後、様々なケースに的確に伝票処理できるようになり、それまで人事部門が持っていた旅費審査などの機能を、経理のお墨付きを得て持つことができました。 A君は、総務人事機能の移植という使命の第一歩を踏み出すことができたわけです。 |