どのようにすれば、自然から自律して自然と対等に共存できる文明になり得るのか。様々な分野で考え行動していかなければなりませんが、その考える際の枠組みを私は下記においています。 |
「学問」とは? | 人間はこれだけのことができますよという事(人間の可能性)を教える。また、やりたい事を実現する方法を教えるもの。 |
「熱力学」とは? | いくら頑張ってもできないことがあるという限界(人間の限界)を教えるもの。 |
「熱力学」の法則は? 熱力学第1の法則: エネルギー保存の法則 熱力学第2の法則: エントロピー増大の法則 |
エントロピー増大の法則とは? @熱は、温度の高い方から低い方に、一方向にしか流れない A森羅万象の変化はエントロピーが増大する方向のみに起こる。 |
「エントロピー」って? | まぁ、廃物と廃熱のことです |
(例) 人体におけるエントロピー増大の法則 |
人は、低エントロピー源(水・食物)を摂取し、活動により増大したエントロピー(廃物・廃熱)を排出(呼吸・汗・尿・便)することにより生命を維持している。 |
では、エントロピーを排出しないとどうなるか? | 熱が下がらなかったり、便秘が続いたりすると苦しい。エントロピー(廃物・廃熱)を排出できなければ、生命活動が低下し、やがて死に至る。 |
開放定常系 エントロピーを系外に排出する能力を持つ系 |
つまり、エントロピーを系外に排出する能力を持たなければ、生命は維持できない。生命は開放定常系である。 |
「生命」とは? | 生命とは、エントロピー(廃物・廃熱)を外に捨てる能力を持つ有機体。 |
「生態系(エコシステム)」とは? | 生命が排出したエントロピーの内、廃物を再利用し、廃熱を外(宇宙)に捨てる能力を持つ系。 |
エントロピー増大の法則の中で、地球はなぜ生命を維持できているのか? |
全ての活動はエントロピーを増大させる。その廃熱を、「水の惑星」地球は水の循環により宇宙へ排出し、廃物はバクテリアを通じてリサイクルすることにより生命の生存環境を維持している。 @塩熱循環(排熱) 北極海で冷却された海水は、深層流を作り全域にわたる。赤道で温められ上昇し、熱を水蒸気として大気中に放出することによって海水中の温度を保つ。 A大気循環(排熱) 水蒸気は高層で膨張すると同時に断熱冷却を起こし、熱を放出して氷の粒になり雲となる。放出された熱を、長波長輻射という形で宇宙空間へ排出することにより大気中の温度を保つ。 B生命循環(廃物リサイクル) 有機物はバクテリアによって廃熱と低エントロピーの有機物に分解され、その廃熱は地下水によって海に運ばれる。分解された有機物は、植物によって吸収され、動物が摂取できる形に再加工される。 |
*水・土・空気は、廃物・廃熱(汚れ)をふき取るきれいな雑巾。 →今や、その雑巾自体が汚れて、汚れをふき取ることができない状態になっています。 |
現代の文明は、ありのままの自然の価値を認識せず、人の手が加わったもののみを価値と見なす基本認識の上に成立している。 さらには、自然を開発して価値あるものに変えることが使命とすら考える(ジョン・ロックやアダム・スミスなど)産業革命以降の力学的文明感の中で、「循環」を無視した開発が行われてきた。 やがて力任せの開発は公害を生む。が、エントロピー概念のない経済学は、いわゆる公害問題を“外部不経済”=市場経済の中では処理できない問題として、政治に下駄を預けてしまった。 そして政治は、処理施設が不足しているという公共設備投資の問題にすりかえてしまった。かくて、公共設備の建設という“開発”がなされることになる。 上下2枚の図を比較すると一目瞭然だが、生命を維持するための開放定常系の仕組みが機能不全に陥りつつある。(詳しくは次のページで) |
■生態系(生命の生存環境)を維持するためには、常に増大していくエントロピーを宇宙に排出する仕組みが必要であること、そして、新鮮な水、空気、土が、その仕組みの根幹であることを認識する必要があります。そして、「排熱」&「廃物リサイクル」の観点から文明社会の仕組みを作り直す必要があります。 ●参考文献:「エネルギーとエントロピーの経済学」 (室田武/東経選書) 「君はエントロピーを見たか?」 (室田武/朝日文庫) |