ガ
イア
か
らの
自律


3、生命循環(廃物)

 人類の優れた知恵である堆肥を例にとりましょう。
 堆肥は、人間の活動の結果生じた排泄物(廃物)から作ります。廃物を積み上げて放置しておくと、バクテリアが活発に活動して醗酵します。よく醗酵した堆肥を触ると、もわっと暖かく香ばしい(?)香りがしますね。
 つまり、廃物(排泄物)は、バクテリアの活動によって廃熱と利用可能な有機物もしくは無機物に分解され(つまり低エントロピーになったということ)、その廃熱は大気中に放出されるか、地下水によって海に運ばれます。
 そして、堆肥は植物によって吸収され、動物が摂取できる形に再加工されるわけです。

 つまり、堆肥というのは、生命活動の結果、高エントロピーとなってしまったもの(廃物)をそのまま捨てるのではなく、バクテリアの分解能力を積極的に活用することにより、再利用可能な低エントロピー源(肥料)に変える作業だったわけです。

 物理学界唯一の真理といってもよい「エントロピー増大の法則」。(他の法則は暫定真理)
 その法則に抗して、高エントロピーの物質を低エントロピーの物質に「分解」できる能力を持つバクテリアを利用してきた、かつての人類は、最高最新の知恵を持っていたと言えるかも知れません。

 生態学者は、植物を生産者、動物を消費者、そしてバクテリアを分解者と呼んでいます。
 動物個々の観点から見ると、自分の生命活動を維持するためには、植物があればOKです。
 しかし、動物を生かす基盤としての生態系を維持するためには、この分解者が最も重要な役割を演じているわけです。

■生態系(生命の生存環境)を維持するためには、常に増大していくエントロピーを宇宙に排出する仕組みが必要であること、そして、新鮮な水、空気、土が、その仕組みの根幹であることを認識する必要があります。そして、「排熱」&「廃物リサイクル」の観点から文明社会の仕組みを作り直す必要があります。

●参考文献:「エネルギーとエントロピーの経済学」 (室田武/東経選書)
        「君はエントロピーを見たか?」 (室田武/朝日文庫)

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