経営者は時流に乗って、安易に流行のプロジェクトに飛びつきがちだ。 カスタマーサティスファクション(CS)が叫ばれれば顧客満足のプロジェクト、IT化による業務効率化が叫ばれればERP導入、という具合。 「顧客満足」や「業務効率化」などの“錦の御旗”に反旗を翻す人はいない。しかし、それがその会社が本当に取り組むべき課題でなければ、社員は小手先合わせでごまかしてしまう。 その“錦の御旗”が共感を得るものでなければ、いくら“錦の御旗”で社員を黙らせ、“プロジェクトテーマ”の下に出したくない部署から社員を“徴兵”しようとも、魂のないプロジェクトは形骸化して徒労と挫折感だけを残して終焉を迎えることになる。後に残されるのは、学習性無力症だけだ。 それゆえ、時流に遅れずうちもやっているよと世間に見せるためだけの、経営者が本気でないプロジェクトは「百害あって一利なし」なのである。 前項で、どのようなプロジェクトも、プロジェクトの本質がメスを入れる行為である限りエネルギーが必要だという話をした。 またこの項で、経営者が本気でなければやらない方がよいという話をした。 つまり、プロジェクトをスタートさせるに当たって、経営者と社員が共に本気になってエネルギーをかけることの出来るテーマを選ぶ必要があるということだ。 では、そのテーマは誰がどう選ぶのか? それは、やろうとするプロジェクトが「破壊」をめざすのか、「創造」を目指すのかで変わってくる。 先にプロジェクトの本質は破壊と再生であると述べたが、大きく分けると既存組織・文化の破壊を目指すプロジェクトと、新しい仕組み・文化を構築するプロジェクトの2つに分かれる。 破壊と構築は同時にはできない。 私の経験では、組織文化の転換を行うためには、およそ10年はかかる。 過去の文化の破壊に3年、 破壊された後の瓦礫を整理し整地するための基盤整備に3年 新たな土俵にレールを敷くのに3年。 そうして、10年目にようやくそのレールの上を組織は走り出し始める。 10年目に走り出すことができればまだいい方で、合併したはいいものの、いつまでも融合しないままの会社もある。結婚した当時から家庭内離婚している夫婦のようなものだ。うまくいくはずがない。 さて、自分の会社がこの10年の間のどの時期にあるのかは経営者ならばわかるはずだ。 もし、破戒しなくてはならない時期にあるのであれば、そのプロジェクトテーマは経営者が決める。 もし、創造しなくてはならない時期にあるのであれば、社員に聞く。 なぜ、そうなのか次で述べたい。 |