anatano@jiritusien.com
ABOUT
TOPに戻る


プロジェクトのテーマの選び方

3.「破壊」のためのプロジェクト

 たとえば、「TPM(total productive maintenance)」というプロジェクトがある。
 以下は、私の極めて個人的な見解として述べる。
 私は、ある石油化学の工場に勤務していた時、TPM運動のキックオフからPM賞を受賞するまでの3年間、みっちりこの運動にかかわった。

 当時、石油化学プラントは老朽化し始め、同時に人員削減を迫られている状況にあった。が、社員の意識は1000人を数えた大工場時代の意識から変わらず、時代背景及び業態からもセクショナリズムが蔓延しており、人の動きは硬直していた。
 今後は、少ない人数で老朽化し始めた設備を点検していかなくてはならない。高圧の化学反応を伴う石油化学は、ちょっとした配管の漏れでも大事故につながる。待ったなしで、社員の意識を変えていかなくてはならなかった。
 そこで、「多能工化」をキーワードに全員で「設備保全」の仕組みを導入するためのTPM運動が始まったのである。



 さて、PM賞受賞のためには、3年間にわたって7つのステップを次々にクリアしていかなければならない。日常業務と同時に、この過酷なハードルをクリアしていくためには、わき目もふらずにスケジュールに尻を叩かれながら遂行していくことが必要であった。

 そして、3年後。
 焼け跡の瓦礫の山といった雰囲気を漂わせ、疲弊しきった組織を見て、私はこの3年間の運動の本質を知った。
 それは、TPMが組織文化破壊のためのプロジェクトであったということだ。



 ポイントは、課題遂行のための過酷さにある。
 TPMのために、他に費やす余分なエネルギーはなくなるのだ。
 その間に、組織が持っていた文化は良いものも悪いものも含めて、なし崩し的に崩壊していく。 
  PM賞を受賞する3年後には、疲れてくたくたの人々にとって過去の慣習などどうでも良くなっている。

 私が学んだことは、抽象的なテーマを掲げる全組織的なプロジェクトは、過去の組織文化のなし崩し的破壊だということである。

 であるから、これは3年間の間はトップダウンの軍隊型でなりふり構わずやらなくてはいけない。 外野に耳を貸してもいけない。途中で頓挫しては何の意味もないどころか、中途半端な破壊の中で混乱がまき起こるだけだからだ。
 破壊するならば、徹底的に行うことだ。



 これは、組織のメンバー個々人が危機感を感じるほど危機感が共有されていなければ、なかなか手を出せるものではない。また、トップには相当な覚悟が要求されるだけに安易に手を出すことができない。
 しかし、当時の工場は何とかしなければつぶれてしまうかもしれないという危機感が共有されていた上に、当時の工場長も自ら草むしりを行った。


【ページトップに戻る】


組織改革
戻る 続きへ
会社が変わるとは、どうなることか
抵抗勢力とは何か
PJ推進組織の意味と役割
PJテーマの選び方